横で眠る「あなた」【未完】
第40章
ゴールデンウイークが明け、学校が始まった。

朝、いつもよりも、やけに神妙な顔をした恵子が、話があると言う。

こういう時の恵子は、2人だけで話したがる。
2人だけになれる、私たちの秘密の場所に着いて、「どうしたの?」と聞いた。

すると、「理先輩と寝た。」と言った。
その言葉は、確かに私にショックを与えていたけれど、恵子は理由もなく親友の彼氏と寝る子じゃない。

それは、今までのつきあいで私が1番知っている。
そんなやぶれかぶれな行為をしたとするなら、思い当たる理由が1つだけあった。
だから、「もしかして、理先輩に代わりをしてもっらたの?」と聞いた。
恵子は、黙って頷いた。

恵子は、小学校から中学卒業まで、淡い片思いを引きずっていた。
それを、振り切ってやっと高校で、両想いの彼氏ができた。

理先輩たちと同じ学年の人で、理先輩と同じ苗字だった。
理先輩は、伊集院の一族ではあるけど、お父様の苗字は、田中とありふれたものだった。

恵子の彼氏になった先輩は、田中武志と言う名前だった。
武志先輩は、学校に馴染めず、恵子に学校やめた後の事も言わずにいなくなった。

恵子は、本気で好きになっていたから、傷ついた。
その癒しを、同じ「田中」の理先輩に求めてしまった。

間違っていると、なんでそんなことをしてくれたの?と恵子を責めることは、いくらでもできる。
でも、あまりにも恵子の傷がわかっていた。

恵子は、「一生、親友の彼氏と寝たことは、背負うよ。友人やめてもいいよ。」と言った。
でも、私は、友人をやめるつもりはなかった。

友人として、恵子の辛さや痛みに、寄り添っていけてなかったことの方が、辛い。
そう伝えた。 
そして、私と恵子は、もっともっと、今までよりも、自分の弱さや辛さを伝えあおうと決めた。

私たちの仲は、より一層深いものへと変化した日だったと思う。

「理先輩から誘ったんじゃないよ。私を見てられなくて、ただ<お兄ちゃん>として慰めてくれてたのに、私が今日だけ<武志>になってと、つけ込んだ。責めたらだめだよ。」と恵子は言った。
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