横で眠る「あなた」【未完】
第49章
ツライことばかりに見えるけど、それでも、楽しいこともあった。

高等部のロビーには、簡易ではあるけれど机と椅子があった。

理先輩たちが、そこでお茶会を開いた。
誰でも参加できるとしていたけれど、いつもの先輩の友人たちと私と恵子しかいなかった。
それでも、その時間は本当に楽しい時間だった。

柚子さんの誘いで理先輩の家に、遊びにも行った。

そして、3学期には、バレンタインデートをもした。
そう考えると、ツライことばかりではなかったと思う。

バレンタインと言えば、奏先輩と詩子先輩のことは外せない。
毎年、多くのチョコレートを貰う奏先輩だけど、今年は受け取らないと言った。

「彼女がくれるかどうかわからないけど、待ってるんだ」と言い続けていた。
ただ、奏先輩は誰のチョコレートとは、絶対に言わなかったので、一層話題になった。

一番有力なのは、女子バスケのキャプテンというものだった。
奏先輩は、男子バスケのキャプテンだったから、今までのつきあいから考えると、多くの人が考えてもおかしくなかった。

しかも、以前からチラホラ女子バスのキャプテンが、奏先輩を好きという噂はあった。

でも、私と恵子は夏の奏先輩と詩子先輩の様子から、詩子先輩じゃないかと思ってならなかった。

私と恵子は、詩子先輩に「詩子先輩は、誰かにあげる予定あるんですか?」と聞いた。

すると、「今まではね、自分に色んな言い訳してきたんだけどね。 モテル人だからとか彼の邪魔にならないようにとか。 でもね、今年は素直になってみようと思ってるの。」と詩子先輩は言った。

「来年になれば、またきっと大学に入るために、頑張らないといけないから。 今年がチャンスだと思うのよ。」とも言った。

「詩子先輩。誰にあげるか教えて貰えますか?」と恵子が聞くと「奏よ。」と答えてくれた。
そして、「貰ってもらえるかわからないけどね。奏は待ってるチョコレートがあるみたいだから。」と言った。

バレンタイン当日、女子バスのキャプテンと詩子先輩が、同時に奏先輩に、チョコレートをあげた。

女子バスのキャプテンは、手作りチョコに手編みのマフラー。
詩子先輩は、市販のチョコレートに、既製品の手袋。

あまりにも、両極端な2人に、見守るギャラリーの方が、どっちを選択するのか気になってしまう。
それとも、やはりどちらでもないのだろうか?



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