牙龍−元姫−
小学生の私は友達と呼べる存在なんて1人も居なかった。小学生に限らず小さい頃からずっと。
他人との馴れ合いや接し方が分からず孤立していた。私が他人を嫌う訳じゃない。他人が私を腫れ物に触るような扱いをする。
だから友達なんて居なかった。
私は常に浮いていた。
これが‘普通’
それはいまも、これからも、この先ずっと、変わらない事なんだと思っていた。
――――――‥しかしある日転機が訪れた。何の拍子も無く前触れも無く。ただ突然に。
それは小学生の頃いつも通り花壇でスケッチブックを広げていたときの事だった。
『ええ!?響子ちゃんも誘うの?ヤダよ!』
『私も〜!だって近寄りがたいもん!怖いって〜!』
『そんなことないって!いいよね?ね?』
『う〜ん。仕方ないなあ…』
『やったあ!』
そんな会話が微かに耳に入って来た。<キョオコちゃん>と呼ばれる子を遊び仲間に入れてあげるらしい。私は特に他には何も考えて居なかった。
花壇の前でチューリップの絵を描く。赤白黄色緑の絵の具。隣には画材が並べてある。
そして逆隣には先生が1人の私を心配してか否や私の隣で絵を描く私を眺めている。
私は先生を気にも止めずにパレットを彩る絵の具の緑色に手を伸ばすが――――――――ドサッ
「……………あ」
肘が当たり箱の中のチューブが散らばった。私は慌てるよりも絵の具を冷めた瞳で見つめ「あ〜あ」と落胆した。
毎日が退屈でつまらない。退屈な日々を送り成長した私はドコか冷めていた。