牙龍−元姫−
「(……里桜)」
里桜が好んで私の傍にいてくれるように私もスキで里桜の隣にいる。義務なんかじゃない。
ずっと励ましてくれて、涙を掬ってくれて、抱き留めてくれて、傍にいてくれたんだ。
思わず里桜に駆け寄りそうになったけど緑川君に遮られて足を踏み止める。
「だいたい何でアンタが肩持つ必要があるの!?関係ないじゃない!」
責めるように叫ぶ里桜に、一瞬だけ輝君は目を伏せる。
そして次に瞼を持ち上げたときに見えた瞳にはどこか切なく、哀しさが込められていた。
「――――わかるからだ」
掠れた声で言う。
ガラリと雰囲気が変わった輝君に里桜は戸惑いながらも眉根は寄せられたまま。
「東と西は似てるところがある。だから先代は反発して貶しあってきた。分かるんだよ、似てるから。似てるからアイツらの気持ちが汲み取れる。テメーが分からねぇことを俺は分かる」
輝君の言いたいことが分かったのか徐々に眉の間に出来ていた皺は薄れていく。
ピリピリしていたムードも一変、しんみりとした雰囲気に変わる。
どこか緊迫感のある、思い詰めた空気になった。
「同じ立場にいれば俺も道を踏み外してたかもしれねえ。俺も、流も。もし先に出逢っていれば――――――‥」
里桜から私に目線を移した輝君にジッと見つめられる。
どうしていきなり私を見るのか分からない。ただ、瞬きすらしないその瞳に吸い込まれそうになった。