牙龍−元姫−
「…アンタ達、男の事情なんて知らないわよ」
ハッ!と鼻で嘲笑った里桜。
輝君から身体ごと背けて私のほうへ歩み寄った。
「……里桜、」
私の目の前に立つと、抱き締めてきた。
私は背に手を回して受け入れる。
小刻みに震える里桜は私の肩に顔を埋めて吐き捨てるように呟いた。
「…知ってるのよ、全部わかってるわ。響子を縛ってるのは私なのかもしれない。でも響子は優しいから私が咎めないと付け込まれるの」
「縛ってるなんて言わないで…。私が里桜の傍にいたいだけなの」
「私と響子は違うわ。私は常に響子を独占したいって思うの。ただ響子が離れて行くのが怖いだけ」
「離れていくわけない…っ」
「そうね、わかってる。でも学校に居たとき不安で仕方なかった。アイツらが来たらどうしようってことばかり考えてたわ」
こんな弱々しい里桜を見たのは初めてかもしれない。噂を聞いて、不安になっていたのは私だけじゃなかったんだ。里桜も不安なんだ。
ギュッと抱き締める腕に力を込めた。
「腹の底ではアイツらを下してる。同時に感謝してるわ。私に響子を返してくれたんだもの」
フフッと微かに聞こえた笑いは、バカにしたようにも聞こえ、嬉しさゆえに零れた笑みにも聞こえた。
「輝の言う通りだわ。響子のために、なんて言って結局は私の想いを押し付けてるだけ。守るとか、傍にいるとか、言うのも響子が離れていかないための魔法の言葉。所詮はただの――――‥」
自嘲する、笑いかた
「――――私のエゴなのよ」