牙龍−元姫−
「私は“人”が恐い」
「…ひと?」
見えてきた少女の心情。
白金は響子ちゃんの言葉に頭を捻る。
「…ただ、恐いの。何を考えてるのか分からない。いつ掌を返されるかも分からない」
どこか遠くを見つめる。スカートを握る手に力が加わった。スカートに描かれた花が形を歪ます。
その瞳は何を思い出しとるのか。
じゃがのぅ…響子ちゃんのその言葉は言い方を換えると…
「みんなが、恐い」
――‥その恐怖は彼らのせいでもある。
平静さを失ったかのように動揺で空気が揺らぐ。
ガタリと天秤が一気に傾いたかのように。
「あれほど――‥
あんなに恐い皆、始めてみた…。凄く恐かったの」
微かに身震いした響子ちゃん。スカートを握る手が小刻みに震え、スカートの裾が波を作る。
ひらひら。ひらひら。
「――――もう、見たくない」
見える拒絶。恐怖で滲む瞳。
ひらりと波を作るスカートがそれを物語っていた。
震える少女に後悔とも謂える何かが溢れ出す。
―――‥金色も震えている。
金色だけは響子ちゃんを見てはいない。耳だけ少女の話に傾けているようじゃ。
握る拳が微かに震えているのが何よりの証拠。
自分への怒りなのかのう。きっと少女を見据えることが出来んのは後悔や後ろめたさから来る念じゃろうな。