牙龍−元姫−
ひとつ言えば僕は
確かに“愛人の子”
でも愛されていない訳じゃない。母さんも父さんも僕を優しく育ててくれた。
当時“愛人”だった母さんは現在正式な妻の立場にいる。
端から見れば前の妻を蹴落としたようにも見えるが、実際は遠の昔に本妻と父は離婚していた。
それは父さんが母さんを愛していたから。
妻になって欲しいとせがまれた母さんは迷った挙句“今はまだ”と渋り愛人の枠に収まったらしい。
いつかは結婚―――‥と言うときに生まれたのが僕だった。
“愛人”と言っても事実上は妻そのものだった。
簡単に言えば内縁。
しかし周りから見れば“偶々出来た子の為に仕方なく愛がないまま結婚した出来婚”と見える。
それに父さんも母さんも苦しんできた。僕のせいで。
異人の血も混じり、ましてや愛人の子。
まるで異端児そのものだと虐められ、風当たりも強かった僕以上に母さんと父さんは苦しんだ。
と言っても僕は然程気にしてはない、
でも何故か母さんも父さんはそれを強がりだと勘違い。
ひねくれた僕の思考に気がつくことはなかった。
今も昔もこれからも。退屈な時を過ごすとばかり思っていた。
そう、過去形で。
戒吏と出逢ってからは一変。いままで内に溜めていたものが浄化したかのように僕は変わった。
柔らかくなったし、負の感情ばかりではなく正の感情を表に出すようになった。
そして生活も一転。
世間一般からは“不良”と呼ばれる分類なんだろうけど、それでも良かった。
僕がこんな道を歩んでいるは誰も咎めなかった。寧ろ喜んだ。僕が変わったことに。
何だかんだアイツといるの、楽しいし、
止めていたとしても変わらないけどね。
“ここ”が僕の居場所だから。
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