牙龍−元姫−
そう清々しく初めて無邪気に笑った庵は綺麗だった。
透き通るターコイズブルーの瞳に輝くプラチナは神秘的だった。
私も庵の髪も瞳も好き。宝石のように優美で綺麗だから。
そう思いに耽ている私の顔を庵は覗きこんできた―――‥
「響子?どうしたの」
「え?」
「ボーッとしてたから」
「い、庵が戒吏と出逢った頃を思い出してて…」
言ってもいいのか迷った。
かなり前に話してくれた過去の話を思い出していた…なんて。
しかし庵は気にしていない様子で「懐かしいね。」と笑った。
「ネジのくだり覚えてる?」
ネジ?あの庵が踏んでいたネジ?と聞くと庵は頷いた。
「あれ、いまは僕が持ってるんだよね」
「庵が?」
戒吏に返したんじゃないの?
私は首を傾げて不思議に思う。
「戒吏と慎さんと3人でバイク乗って事故って入院したときの見舞いの品だよ」
「…お見舞いに、ネジ」
私は思わず苦笑い。庵も同様。
きっと何をあげれば良いのか分からなかったんだろうね。
「戒吏と出逢わなかったらずっと引っ込み思案で捻くれてたかもね」
そう笑う庵はやっぱりキレイ。
端で透き通る水晶が目に映る。このガラスのように庵は綺麗だと改めて思った。
「奇跡なのかもしれない。アイツらに出逢えたのは―――‥」
アイツらはきっと牙龍の皆のこと。
「それに響子も」
「わ、たし?」
まさか私も入っているとは思わず目を見開く。驚きを隠せなかった。
「響子と出逢わなかったらこんな感情知ることはなかったよ」
――――こんな誰かを愛しく思うことはなかった。
「…庵、」
「ゴメンね」
「…」
「…ゴメン」
それが何に対しての謝罪なのかは分かるようで、分からない。
でもこの部屋に入ったときから、懐かしげに目を細める私を辛そうに見ていたから大方わかる。
本当に気にしていないのに――――――そんなに自分を責めないで欲しい。
泣きそうな庵を見て、私まで泣きそうになってきた。
庵が泣かないから、私が泣いてしまう。
これが男と女の違い?
(男の子だって、)
(辛いときは)
(泣けばいいのに。)