牙龍−元姫−
「戒くーん!」
寿さんは自分の仲間が現れて笑顔を見せる。そう。戒吏は私を助けた訳じゃない。
「何やってんだよ〜」
ダラダラとした気力のない、聞き慣れた声。
「蒼っち!」
「店で暴れるんじゃね〜よ」
たくっ、と悪態を付きながら彼はタバコを吸う―――――――――タバコ吸ってるんだね。彼が吐き出した白い煙はモヤモヤと店の天井に吸い込まれるように消える。
(しゃーねえな〜。響子が言うんなら俺、タバコやめるわ)
ズキンッ
胸に氷柱が刺さった。何でこんなこといま思い出してるんだろう。私が居なくなったから吸い始めたのかな?煙草は身体に悪いのに。―――――意外にも冷静に頭の中で、そう考える。