獣は禁断の果実を蝕むのか。


耳の奥まで低くて甘い声が響き渡るように、イジワルに囁いた。


ポンと顔が真っ赤になったのは、耳元に甘くかかる専務の呼吸が原因じゃない。


専務の部屋で襲われたこと。


九重部長の前でされたこと。


フラッシュバックのように、記憶が蘇って。


それだけで私の服のサイズが分かることも凄いけど。


「たしかに、こんな所でする話じゃなかったです。」


真っ赤になった熱く火照った顔をうつむけたまま。


唇を小さく噛みながら、いたたまれず立ち尽くしていた。


「さあ、行くぞ。」

「はい。ありがとうございます。」


小さく答えると、専務の顔がチラッと私に振り返って


「お礼は必要ないだろう?」

「でも…」


そこは、キチンとしておきたかったから。

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