獣は禁断の果実を蝕むのか。
「なんだ?」
メガネの奥の鋭い視線が、パッと私に向けられた。
「ちょっと前に、彼氏にこっぴどくフラれたもので…見境なく絡んでいたんだと…」
間違ってはいない。
でも、切り抜けられるのは、これしかないと思ったから。
「そういうことか。キャピステールの常務は、結婚が決まったらしいし、その表情が浮かれて見えたのか?」
「…多分。」
「そうか。偶然ってやつだな。まあ、キャピステールの常務も、政治家の娘と結婚だなんて、政略結婚もいい所だからな。幸せを恨むな。」
「え!?政治家の娘?」
皆瀬さんじゃないの?
…皆瀬さんが、実は政治家の娘?
イマイチ状況が理解できないけど。
まあ、上手くごまかせたからいい。
「そうだ。大物政治家の娘と結婚となれば、将来は思いのままだろうしな。」
一瞬だけ、専務の顔色が青くなった気がしたけど、気のせいだよね。