獣は禁断の果実を蝕むのか。

私は、これから身売りをするんだもん。


当然か。


ギュッと握った手。


小さく震えているのは、上手く出来るか心配だけじゃなくて。


自分を自分で九重部長に売らなきゃいけない覚悟を完全に決めるため。


そして…


この計画が上手くいくように、九重部長をダマすための覚悟を決めたから。


「おい。待たせたな。」


いきなり声を掛けられて。


振り向いた先には、ワインレッドのフェラーリ 599XXの運転席の窓から九重部長が声をかけてきた。


「あ…いえ。大丈夫です。」


やっぱり、S&Gの部長もお金持ちなんだって。


圧倒される。


「梓悸がどうかしたのか?」


思ってもいない言葉に、一瞬だけ動揺したけど。


「あっ…専務はまだ仕事なのに、私は帰ってしまって申し訳ないなと思って。」


感傷にも似た感情に浸っていたなんて言えない。

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