獣は禁断の果実を蝕むのか。

「待っていたわ。」


そう言いながら、笑顔で私を迎えてくれた。


皆瀬って男の人かと思っていたけど。


パッチリと大きな瞳に栗毛色のゆるやかな巻き髪。


スッと通った鼻筋は美人だって誰もが思う。


少し緊張しながら、


「は…」


初めましてって挨拶をしようとしたのに。


「今日から私の代わりに働いてくれることになった小松沙菜(こまつ·さな)さん。」


さえぎるように、向かいのデスクに座る女の人に紹介した。


「ああ、皆瀬さんの大学の後輩のお友達。はじめまして、嶋元あかりです。」


そう言いながら、お嬢様って言葉の似あいそうな美人な女の人が、ペコッと軽くお辞儀をした。


だ…大学の後輩?


何のこと?


戸惑う私の横で


「そう。ほら、急な寿退社でしょ?だから、確実性のある人と思って。じゃあ、会社を案内しながら室長を探してくるわ。」


あかりさんにほほ笑むと、秘書室から出て行った。
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