獣は禁断の果実を蝕むのか。
「大丈夫。実はオレもド新人でさ。」
コソッと耳打ちされた。
ほんの少し、耳にかかった息が。
常務に囁かれているような錯覚を起こして。
トクン
トクン
って、鼓動が高鳴って。
ガチガチの氷のような緊張感は、いつしか甘い緊張に変わった。
「店だとお金かかるから。」
そう言ってこっそり渡された携帯番号。
常務に手は届かなくても。
どこか似ている祐爾なら、そばにいられると思った。
他愛ないメールのやりとりをして。
ご飯を食べに行ったり。
映画を見に行ったり。
まるで、恋人同士のようだった。
だから