獣は禁断の果実を蝕むのか。
「どうしよう?せっかくつかんだと思った上客が、ツケにしてそのまま逃げられた。」
神妙な声をしながら、電話をしてきた祐爾。
そんなの初めてで。
「それ、どうなっちゃうの?」
「…自分の借金だよ。」
重たく口を開く。
「そんな…祐爾は悪くないのに?」
「でも、自分の客だからさ。ごめん。そのお金とかどうにかなるまで、しばらくは会えない。他にも仕事…しなきゃな。」
電話越しでも、祐爾が泣きそうなのが震える声で分かった。
だから
「そのお金って…いくらくらい?」
「160万。」
「そっか。」
そう答えながら、頭の中は預金がいくらあって、何をどうすればそのお金になるか考えた。
普通なら、ダマされてるって思うでしょ?
でも、お店には来るなって言われたし。