獣は禁断の果実を蝕むのか。

聞こえることのない部屋の主に、深く頭を下げた。


もう、感傷に涙が流れないよう、急いで部屋を後にした。


必死に押し殺そうとした涙。


エレベーターの中で、甘い香りがフワッと鼻にかかって。


専務の匂い…


服に付いちゃった。


溢れそうな涙をグッとこらえて。


今にも倒れ込みそうな体を奮い立たせて。


強く唇を噛みしめた。


ポーン


音がして開いたエレベーター。


そこに立っている人物を見てギョッとして、抑えていた涙がポロリと一粒落ちた。

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