獣は禁断の果実を蝕むのか。

「九重部長!?どうしてここに?」


まさか、私を追って専務のマンションまで来たの?


「どうしてって…オレもこのマンションだもん。」


そう言いながら、押し込められたエレベーター。


ヤバイ…


どうして、こんな時に?


危ないと思ったのは本能。


もう、腕まで掴まれていたから。


なのに、フワッと鼻にかかったのは、九重部長のシトラス系の香り。


まるで包み込むかのように、優しく香っている。


そして、抱きしめる腕も。


いつもの強引さとか、力強さとかそんなのじゃなくて。


まるで、温もりを感じさせるものだった。


「あ…あの!?」


動揺する私の声に


「バーカ!!寂しいなら寂しいって言えよ!!」


囁きに近い。


耳にかかった言葉。

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