獣は禁断の果実を蝕むのか。
「私は、ホストにダマされ、1800万円の横領をした人間です。そんな人間でも、専務といられたことは、人生で2度と見られない夢の中でした。」
本当に、夢のような時間だった。
こんな形で終わってしまうのが、苦しいくらい。
もっと、ギリギリまで夢の中にいたかった。
「それで常務に送り込まれたと…」
その言葉に、やぱり、あの日、私は酔った勢いで話してしまったんだって確信した。
そうじゃなかったら、驚くはずだし、常務のことも知らない。
「そうです。借金チャラにして、横領の事実を無くしてやるって。給料3倍とボーナスとして1000万も用意するって。」
「その常務、何をしたか知っていますか?」
冷静な顔をしながら、氷のような瞳の奥はしっかりと私を捕えている。
「何をしたかって…知りません。私は、普通のOLでしたから。」
「デジウェンといえば分かりますよね?」
九重部長が言っていたやつだ。
S&Gを倒産ギリギリまで追い込んだ、欠陥商品。
「聞いてはいますけど…」
常務と何の関係があるの?