ふたつの背中を抱きしめた


子供達を着替えさせ終わると、園庭の日陰で柊くんがホースでプールに水を入れていた。

「やったあ、プール!」
「プール、プール!」

子供達が目を輝かせてビニールプールに一直線に走りだす。

「あっ、バカ、まだ水冷たいから待て!」

柊くんの制止も厭わずに子供達はまだ水の浅いビニールプールへジャブンと飛び込んだ。

きゃはははと笑い声をあげるマルちゃんとリンくんに、柊くんが

「ま、いっか。」

と言って頭をくしゃりと掻く。

「良かった、凄く嬉しそう。」

そう言って遅れて出てきた私に

「チビは水が好きだからな。」

と柊くんは子供達にホースで悪戯に水をかけながら言った。

キャアキャアと声を上げて喜ぶ2人を、プールの淵に手をかけしゃがんで見つめる。

手でパシャパシャと水を掬ってかけてやると、マルちゃんが嬉しそうに水を掛け返してきた。


「あはは、冷たくて気持ちいい。」

子供達の無邪気な笑顔に、私も童心に還る。

「真陽もガキみたいだな。」

そう言った柊くんに私は

「柊くんは今日は大人みたいだね。」

と顔を上げて言った。

柊くんは1回瞬きをしてから

「…頑張ってるんだよ。」

と、ちょっと照れ臭そうに言った。そして

「俺のせいで真陽が怒られたら嫌だから。頑張ってやってみてんの。」

と顔を紅くした。

そんな柊くんを見上げる私の顔もきっと紅かっただろう。

「…合ってる?やり方。」

私の目を覗き込むように言った柊くんに、私は

「…合ってる。」

と惚けたように答えた。

次の瞬間、柊くんはニッと悪戯っ子の笑みを浮かべホースの水を私に向けた。

「きゃあっ」

ジャバジャバと水飛沫が私の熱くなった頬を濡らして冷やす。

「もう、柊くんてば!これは合ってない!」

「なんで?さっき冷たくて気持ちいいって言ってたじゃん。」

水飛沫を手で交わす私にヒヒッと意地悪な笑いを浮かべて柊くんはホースをゆらゆらと振った。

「しゅうくん、あたしにもかけてー!」
「オレもオレもー!」

手を伸ばす子供達にも楽しそうに水を掛けて、柊くんは声をあげて笑った。


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