ふたつの背中を抱きしめた
「俺はさ、多分生まれる前からダメって言われ続けてきた人間なんだ。
俺の親は子供なんか欲しくなかったはずなのに俺を産んだ。
出来ちゃダメって思いながら妊娠して、育っちゃダメって思われながら俺は腹の中で大きくなって、産まれちゃダメって思われながら俺は産まれたんだ。
そんでさ、捨てられた後もあの施設でお前なんかなんの価値も無い人間なんだってずっと殴られてたからさ。
俺はこの世界に居ちゃダメな人間なのかよってずっと悔しかった。
だから今でも頭ごなしにダメって言われると、なんか全部否定されたみたいでスゲー腹立つ。俺の1番キライな言葉。
だからそれを言わない真陽が、俺は大好き。
真陽が受け入れてくれる度、俺は生きててもいいんだって思えるから。」
時々、抱きしめた腕に力を籠めながら柊くんはそう話した。
それは恋のエピソードと言うにはあまりに苛酷で悲しい話で。
そしてそれは
私が柊くんの手を離せなくなる緩やかな束縛。
「もちろんそんだけじゃないよ。真陽 、可愛いし。バカでちんちくりんなトコも大好き。」
照れ隠しのように悪戯っぽく笑って、ぎゅっと抱きしめてきた柊くんの腕に手を重ねながら、その時の私は思っていた。
私、柊くんと出会うために生まれてきたのかも知れない、と。