ふたつの背中を抱きしめた
「…間違いじゃ、ないの。過ちでもない。」
私の言葉に、綜司さんが笑顔を無くす。
「…ごめん、綜司さん。もう…やり直せない…。私…もう、柊くんの手を離せない。」
またひとつ、
私は綜司さんを絶望へ突き落とす。
「…僕より…その男を取るの…?」
信じられない、と云った表情で綜司さんが私を見ている。
「…何が、何が足りないの?真陽?
僕に何が足りなくてそいつを選ぶの?
もっと優しくすればいい?もっと一緒にいる時間が必要?
それともやっぱりもっとなんでも買ってあげれば良かった?
ねえ真陽?真陽?」
すがるように、綜司さんは私に問い詰めた。
私の瞳の中に必死に答えを求めて。
そんな綜司さんに、私はただただ首を振って答える。
「違う、綜司さん。綜司さんは何も足りなくない。充分過ぎるほど私に与えてくれた。
…でも、柊くんは…何も、何も持っていないの。
家族も、友達も、愛情も思い出も、何も知らない。自分のコトだって将来のコトだって自信が無くて…生きる意味さえ知らない子なの…。
…だから…私が必要なの。…柊くんには、私しか無いの…。
ごめんなさい。私…柊くんの傍に、居てあげたい…。」
なんて、残酷。
綜司さんの心を切り刻むように
私は、柊くんへの想いをこの口で紡ぐ。
どこまでもどこまでも
酷い女。