ふたつの背中を抱きしめた
義父様はゆっくりと、義母様は涙に詰まりながら、私に話してくれた。
私の想像もしなかった綜司さんの過去を。
---17年前、幼い私と別れてから、綜司さんは泣かない子供になっていた。
浅葉家の一人息子として相応しいようにと少年には過酷な努力を求められても、彼は気丈に振る舞い続けた。
優しくて責任感の強い綜司さんは、両親の、祖父母の、一族の、そして周囲の期待に応えようと 、人並外れた努力を続けてきた。
けれど、周りはそれを当然の事としてしか受け止めなかった。
「浅葉家の跡取りとして相応しい人間に育て。努力を怠るな。」
「これだけ手を掛けてるんです。出来て当然でしょう。」
「浅葉はいいよな。金持ちでなんでも出来る人間で。」
周りの期待と羨望がいつしか綜司さんの心を壊していく。
泣いても涙を拭いてくれる手を失くした綜司さんは17年前のあの日から泣かなくなった。
そして成長した彼は今度は、笑うコトをやめた。