ふたつの背中を抱きしめた


「高校生の頃から綜司は私達に一切笑顔を見せなくなったの。…なのに私達はその異常に感心を持たなかった。」

「ちょっとした反抗期くらいにしか思っていなくてね。学校では普通に笑っていたように見えたし。…今思えば全然普通じゃなかったがな。あんな…貼り付いた仮面みたいな笑顔なんか。」


とても、とても悔いるように義母様と義父様は言った。





努力を続け高みに立ち気丈に振る舞わなければ『浅葉綜司』ではいられない。

誰にも弱味は見せられない。


けれど、綜司さんは、本当の綜司さんの心はいつも助けを求めていた。



疲れた。疲れた。いつまでこの努力は続くのだろう。

努力をやめたら、僕は僕で無くなってしまうんだろうか。

成績優秀で運動が出来て誰にでも優しくてなんでもこなす、それが『浅葉綜司』。

じゃあ、そうじゃなかったら?

僕はいったい誰なんだ。


誰か助けて。

本当の僕を知って。

本当は泣きたい僕を。

頑張ったね、とたった一言誉めてもらいたい僕を。

僕は天才なんかじゃない。なんでも出来て当たり前じゃない。

辛いんだ。苦しいんだ。

もう嫌なんだ。


助けて。助けて。

助けて。



子供の頃からずっと抑えられ続けてきた綜司さんの心は

21歳の時に、ついに、砕けた。


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