ふたつの背中を抱きしめた
ここにいる大人の何人が、タクミくんが車が好きだと気付いていただろう。
「何これ?また柊くんでしょ?勝手なコトして!」
案の定、桜で彩られた遊戯室の壁にヒッソリ貼られた車の色紙を見つけた矢口さんが怒っている。
矢口さんは正規スタッフで1番キャリアの長いしっかりモノだ。
やたらと厳しく規律正しいのは責任感のある証拠。
なんだけど、四角四面の矢口さんは柔軟過ぎる柊くんにとっては天敵だ。
なるべく他のスタッフに見つからないように、車はヒッソリと端っこに貼ったんだけど…さすが矢口さん、あっさり見破ってしまった。
「すいません、あの、コレには深い理由が…」
「櫻井さん、貴女がやったの?」
「えっ!?えぇと、まあ、共犯みたいなモノです…」
「共犯ってコトはやっぱり主犯は柊くんね。貴女までなんであの子の悪ふざけに付き合うの?貴女は正規スタッフでしょう?」
「しゅ、主犯だなんてそんな言い方…」
しどろもどろの私の弁明など聞く耳もたず、矢口さんは「後で剥がして置きなさい」と言い残して肩を怒らせたまま遊戯室から出て行った。
私は、矢口さんに上手く説明出来なかった自分の情けなさにひとつ、ため息をつく。
けれど。
夕方、昨日は1人で泣いていたタクミくんが
今日は遊戯室で柊くんの切った車をニコニコ眺めているのを見た私は
---柊くんは、間違ってない。
強く、とても強く、そう思った。