ふたつの背中を抱きしめた


「柊くんてさぁ、優しくないよね。」

お説教の翌日、リエさんがスタッフルームで唇を尖らせながら言った。


子供達がみんな学校に行っているので今の時間は園にリエさんと私しかいない。

2人で子供達の個別情報用紙に今朝の健康状態を書き込みながら、しばし訪れた静かな時間をのんびり過ごす。

「優しくない?」

私はマイカップに注いだ冷えた麦茶を飲みながら聞き返した。

「そう。だって私達が怒られたのって柊くんのせいなんだから“ゴメンね”の一言があってもいいと思わない?」

「んー…」

私は返答に詰まった。

だってあの不器用キングの柊くんにそんな気遣い求める方がムリって言うか…。

まあ、でも。柊くんのコトが好きなリエさんからしたら確かに不満だろうな。

庇った挙げ句、なんのリアクションももらえないんじゃ。

「口には出さないけど、きっと申し訳なく思ってるかもよ?」

とりあえず、私はリエさんにも柊くんにも毒にならないフォローを入れといた。

「あーあ。柊くんもうちょっと愛想が良ければなー。」

リエさんは椅子の上で伸びをしながら残念そうにそう言った。



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