ふたつの背中を抱きしめた
「…柊…くん…?」
止まりそうな息と一緒に、途切れ途切れに名前を、呼んだ。
けれど
柊くんは何も、答えない。
変わりに、私の背中を抱く手に
ギュッと力が入ったのが分かった。
その感触に、私はやっと今起きてる事の大変さに気付く。
「…柊くん…っ!」
柊くんの体を押し返そうと手に力をこめるけど、堅く抱きしめられた腕はほどけない。
「…っ、どうしてっ…、どうしてこんなコトするの…っ」
もがきながらそう言った私に、柊くんの手の力が抜けたのが分かった。
そして、柊くんはゆるゆると手をほどくと
とても哀しい色を浮かべた瞳で私を見つめた。
深い黒。
吸い込まれそうに、深い黒の瞳で。
「…柊くん…?」
その瞳が
私に何かを訴えている。
私に何かを、伝えたがっている。
けれども
柊くんは、私の呼び掛けに応えず
そのまま無言で立ち上がり廊下の奥へと歩いて行ってしまった。
「……柊くん」
私は取り込んだタオルと
激しい雨音に包まれながら
ただ、その後ろ姿を見つめていた。