ふたつの背中を抱きしめた
---白昼夢だったのかもしれない。
未だ弱まることの無い雨音を聞きながら1人で取り込んだ洗濯物を畳んでいるとそう思えてくる。
柊くんが私を抱きしめるなんて、あり得ないもの。
そんなこと、きっと、絶対に、あり得ないもの。
---でも、
残っている。
身体に、柊くんの腕の感触が。
硬くて、力強くて、紛れもなくそれは、男の人のもので。
どんなに頭で否定しても
この身体が、
彼に抱きしめられたと、私の奥で熱く囁いている。
「………!!」
私はギュッと目を瞑り、激しくかぶりを振った。
…どうして…!?
なんで、なんでなの柊くん!?
近付いて、離れて、また近付いて。
もう戻ってこないくらい離れたと思ったら、
…抱きしめ、られた。
私は柊くんが何を考えてるのか、さっぱり分からなかった。
『柊くんは、案外真陽ちゃんを気に入ってるのかもね』
『柊くん、櫻井さんには心を開こうとしてるように見えるの』
濱口さんと園長の言葉が頭に浮かぶ。
……柊くん……
私、貴方の何なの?
貴方は私に何を求めているの?
どうしたらいいの、私?
私は混乱した頭と裏腹に
抱きしめられた感触を覚えている身体が熱く胸を高鳴らせている事が恐くて
「…助けて…綜司さん…」
何処かに堕ちていきそうな自分の身体を両腕で支えながら
世界で1番愛しい人の名前を呼んだ。