伝えたくて、君に。
歌が好き。

この気持ちは負けない。

春先は歌いたくなって仕方ない。

…だから屋上で歌ってるんだけどさ。

今も屋上行って歌うけどね。

でも今は…。

あいつのために歌ってる気がする。

おかしいよ、あたし…。

作詞作曲までしてる。

今日はちょっとだけ試してみようかな。

自分に溢れてくる想いと、何千回と試した曲を。

キーンコーンカーンコーン

「お、ちっひ今日も屋上?」

美羽の言葉に頷いて教室を出る。

屋上までの階段を一段とばしで登ってドアを開けた。

「キレー…。」

どこまでも澄み渡った空がとても綺麗だった。

「…すぅっ」

息を吸って、歌い始める。

「君と出会ったのは 咲き乱れる桜の季節
 担任の長話と   自己紹介の待ち時間

 初めてちゃんと話した屋上
 あたしと君

 出会えてよかった なびく春の風
 ずっとに聴いて欲しいあたしの歌を
 この声を 叫ぶように 歌うよ―――…。」

…実はこの曲、一番しか出来てないんだよね…。

「おい」

「!」

…振り返ると、あいつの姿。

「…泰成。」

「今の曲、誰の?すげー良かった。」

さすがに、自分の、とは言いづらい…。

「…内緒。」

「えー、教えろよ!」

「嫌。まだ覚えきれてないし、未完成だし。」

「…そ。じゃあいい。覚えきれてお前が完成したと思ったら誰の曲か教えろよな」

「分かった。その時は必ず。」

「約束な!」

と言って泰成が小指を出す。

「…ほら早く!」

「で、でもさ…。」

「ほらっ!」

「…///」

「「ゆーびきーりげんまん嘘ついたらはりせんぼんのーます、指切った!」」

フッツーに指切りできるくらいあたしは恋愛対象じゃないんだ…。

軽くショック…。
 
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