幕末オオカミ


得体の知れない不安が、波のように押し寄せる。


耳に聞こえるのは、幼い自分と母の声。



『なんでかぐや姫は、月に帰っちゃったの?』


『かぐや姫は狼女だったから、人間の世界に馴染めなかったのね。

それに狼は、とても誇り高いの。

狼の寿命は、もって10年。

もしかしたら、おじいさんたちより早く老いて死んでしまうかも知れないでしょう?

かぐや姫はそんな姿を人間に見られるのに、耐えられなかったのよ』





……狼の寿命は、もって10年……



まさか……


総司…………



「楓くん、落ち着いて聞くんだよ。
今、総司はすごく体調が悪い。
それは多分、狼の血のせいだ」


「体調が悪いって……」


「……ちょっと、変な咳が出る程度だ。
労咳に似ている咳だよ」



あたしを座らせ、肩を支えながら、局長は言い聞かせるようにゆっくりと話す。


そういえば……


いつもはほとんど付かない血が、着物の袖に付いてた。


あれは、総司の血……?




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