死にたい天使
出逢い
 ちょうど10年前に、あの人とはここで会った。
 僕は一人でこのビルから小さい人を見るのが好きだった。虫の蟻のが必死で働いてるみたいに思えた。ちっぽけで、ご飯を食べる為に必死で走っている。
 しばらくすると、一人の高校生が屋上の扉を開けた。風のせいで、ドアは勢いよく閉まる。
「先客がいた。」
 彼女はそう言って、僕の隣に座った。
「みんな蟻みたいに小さいよね。ここにいると世界を支配出来た気分。」
 僕と同じ考えの人がいるなんて、嬉しかった。
 彼女は下を見渡しながら、僕に聞いた。
「ここから飛べば死ねるかな。」
「天使になれるよ。」
 僕はそう答えた。すると、彼女は嬉しそうに笑って僕を見た。その笑顔が可愛くて、僕も笑った。きっと、この世界に来て始めて笑ったと思う。
 そして、彼女は一言こう言った。
「ありがとう。」
とその瞬間、彼女は目の前から消えた。本当に一瞬の出来事だった。
 僕は、もう彼女の笑顔を見れなくなってしった。
 天使の掟を破ってしまったんだ。
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