情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あの、左近様。ずっと前に大垣城で、たとえあんたの前にどんなに色男で身分が高い男が現れたとしても、俺を選んでくれますか?ってらしくないこと言ったのって、もしかして」


追憶に浸っていると、友衣さんはそんなことを聞いてきた。


「はい。そして昨日、殿はあんたに特別な感情を抱いていたんじゃないかって言ったのも、全て殿の気持ちに薄々気付いていたからなんです。俺はそれにずっと気付かぬふりをしてきました」


「そうなんですか?」


「殿が相手じゃ、さすがの友衣さんも心が揺れかねないなんて思って。自信なかったんです」


俺が女性関係で自信がないだなんて甚だ不覚ではあるが。


本当に色々な意味で殿を認めていたということだ。


「だから、15年前から殿の気持ちには、あえて触れませんでした。あのお方は義理堅い。だからどんなに好きでも華嬢や奥方様がいてさらに女を作るとは思えなかった」


「ええ、そうだと思います」


「ましてや友衣さんには俺がいたから、その関係を壊すようなことは絶対にしないだろう。それを分かっていて、ずっと知らない顔をしていました」


「私、何も知りませんでした」


「俺は…相手が自分より上だからと勝手に引け目を感じて、そして殿が気持ちを表に出すことはないと分かりきっていて見て見ぬふりをしていたんです」


おまけに殿は、男の俺でも見惚れるような美しいお顔立ちですしね、なんてことも言ってみたが。


今の言葉達は、冗談ではない。


友衣さんは少し戸惑っていたようだが、一瞬の沈黙の後、優しく微笑んだ。


「でも、左近様がどうしようともきっとあなたを嫌に思うことはないはずです。だって、三成様は私達が仲良さそうにしているといつも嬉しそうでしたから」


「殿…」


ふいに彼の少し恥ずかしそうな表情がよぎる。


奥方様や華嬢ですら見せたことのない顔を、友衣さんは引き出させた。


彼女はやはり…不思議な人だ。
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