情炎の焔~危険な戦国軍師~
「それにしても、どうして今になってそんな三成様の話を?」


友衣さんはもっともなことを言う。


「殿が言わなかったのならそれを尊重しようと思っていた。でも、素直じゃない殿の代わりに言ったほうが良いような気もしたんでね」


もちろん先ほどまでの淀殿とのやりとりがきっかけではあるが。


きっとだが、心残りだったのではないか。


15年も経った今日になって殿の話がこんなに出たのは、もしかしたらそういうことなのではないかと思ったのだ。


昨日話した殿の友衣さんに関する数々の言動。


特別な感情は確かに抱いていたはずだ。


「三成様の気持ちは嬉しいけど私には左近様がいるのに」


「そんなのは殿も分かりきっています。ただ、密かに想いを寄せているだけで良かった。もっと言えば、あんたが笑ってさえいれば良かったんでしょう」


「そんな」


「関ヶ原の戦いの前にあんたに思いを告げることも出来たはずです。厳しい戦いになることも予感していましたし。でもそうしなかった」


「…」


「殿は最期、目が合った時に笑ってすらいたと言いましたね‍?」


「はい」


「あんたが生きていてくれて良かった、そしてこの先もどうか生きてほしいと思っていたんだと思います」


ま、正直なところその辺は想像ですがね、と付け足したがあのお方ならきっとそう思うだろう。


「そんな風に思われるほどあんたは認められていたし、殿はあんたを心から大切に思っていた」


「三成様、私のことバカとか珍妙とか色々言ってたのに。やっぱり不器用だなあ」


なんとなく彼女は涙ぐんでいるように見えた。


「こうやって扇子をパタパタさせながら思ってもいないことばかり言っちゃって」


そして扇子をそわそわと開け閉めする。


「ですな」


思わず笑いがこぼれた。


「…豊臣のために戦わなきゃ。だってあの人が命をかけて守ろうとしたんですから」


そう言う友衣さんの目はすでに未来を見据えているかのようだった。


彼女はすでにこの後の結末を知っている。


だが俺達が勝つにしても負けるにしても、友衣さんはここにいてくれている。


それだけは真実だ。


「ええ、もちろんです。殿とは出来なかったが、今度こそあのお方の志を叶えましょう」


こうして殿を思った日の夜は、彼のたまに見せる微笑みのように穏やかに更けていった。


殿。


これで少しは、思い残しがなくなりましたか?


豊臣は俺達で守ります。


だから見ていて下さい…。
< 462 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop