夢見るゾンビ

「入学式までに少し時間がありますから、みんなに一言ずつ自己紹介してもらおうかな」

プリントを配りながら、先生が言う。

前に座っている子が、前から回ってきたプリントを回すときにちらり、と振り向いた。

「1枚多いかも」

私の席は後ろから2番目なのに、私のところに回ってきたプリントは3枚だった。

「他の列で足りなくなるかもね」

私がそう返すと、その子はうなずいて苦笑いする。

もう、及川先生ったら。中年にもなると指の油分がなくなってきて紙をうまく数えられなくなるのかしら。それとももう老眼が始まってるとか?

色々喋りたかったけれど、初っぱなから私語で怒られたらたまったものじゃない。私も肩をすくめて苦笑いした。

色白で、少しぽっちゃりめだけど笑うとエクボができるかわいい子だ。
友達になれそう!

こんな些細な会話が、楽しくて楽しくて仕方ない。



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