夢見るゾンビ
案の定、プリントは隣の列で1枚足りなくなった。
私は斜め後ろの子に、とっておいた1枚を渡してあげる。
漆黒のショートカットが印象的な子だ。
「はい、どうぞ」
私は大層フレンドリーに渡したつもりだったが、その子はにこりともせずに受け取った。
こ、こわ…
そう思った瞬間、その子の唇がかすかに、「サンキュ」と動いたのが見えた。
なぁんだー!!この子もいい子ぢゃーん!!
多分、この子は高倉健ばりに不器用な子なんだ。自分の気持ちを、なかなかうまく伝えられないのね。
私はその子が、
「自分、不器用なんで」
とぼそっと言ってる姿を想像して、またニヤニヤしてしまった。
不器用だけど、いい子だ!友達になれそう。