レス彼 〜私の彼氏はセックスレス〜
篤彦はセックスレスの話題に、敏感で、それについて話す事に嫌悪感さえ抱いている。
「僕にどうしろっていうのさ」
「な、なんでもないよ。あたし、何にもゆってないじゃん?」
まさか、今夜はお誘いOKかもしれないなんて、発情しかけていたなんてことが篤彦にばれたら、どんな言葉が飛んでくるかわからない。
こういうモードに入った篤彦の口から出てくる言葉は、私を傷つける言葉以外、出てこない。
本能的にそれを察知した私は、一瞬にして欲情しかけていた自分を封印し、平静を保つためにしらを切ろうと頭をフル回転させ始めた。
「ほ、ほら…早くシャンプーしちゃおうよ」
「…」
無言でうつむく篤彦の頭を半ばむりやりシャンプーしようとした。早く空気を変えようと必死に話題を探す。ええと、ええと…どうしよ、何を切り出そう…
Pull Pull
バスルームの外から篤彦の携帯が鳴る。あの着メロは編集部からの着信だ。
「…ごめん、先出るわ」
篤彦はそういうと、濡れたからだのままバスタオルをひったくり、電話のもとへ急いでいった。呼び出しには間に合ったようで、仕事の打ち合わせをする声が聞える。
電話に救われた、とほっと胸をなでおろすと同時に、やはり甘い期待は叶うことはなかったという複雑な気持ちに襲われる。
シャンプーしようと出したはずのシャワーは、お湯の栓をひねり忘れ、冷たい水が出ていた。
私はそれを頭からかぶり、1人バスルームで声を殺して泣いた。