フクロウの声

「そうだったな。俺が悪かった。」
 
永倉はなぜだか謝って目をそらした。

「永倉さんや沖田さんが斬れないというのなら、
 平助という人も私が斬ってもいいですよ。」
 
マオリは投げ出すような言い草で永倉を振り向かせた。

「余計なことをするな。
 おまえは土方さんの言うとおりにしてりゃいいんだ。」
 
永倉は語調を強めた。

マオリは自分の知らない仲間意識にむくれて、
永倉から離れて歩き出した。


寒さにかじかんだ手をこすりあわせながら、
マオリはじっと物陰に身を潜めた。

少し首をねじって通りを見た。

油小路と呼ばれるその通りに、
マオリが斬った伊東甲子太郎の死体が無残にも放置されている。
おおよそ血も出きったとみえる。

「来ねえなあ。」
 
そばに潜んでいる永倉がつぶやいた。

「そうですね。」
 
永倉は振り返った。

「おい、総司、なんでここに。」
 
そこに立っていたのは隊服に身を包み、
愛刀を携えた沖田総司であった。
 
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