フクロウの声
死にかけた弟を背負って、
やっぱりあの子供のように顔中真っ黒にしていた。
 
マオリはじっと、その子供を見つめている。

「フクロウ・・・。」
 
マオリがおれを呼んだ。

おれは返事をするようにマオリの肩に止まり、
まだ乾かぬ血に濡れた髪におれの白い体を擦りつけた。

「おめえ、死にかけたおらに憑いたんだったな。」
 
そうだ。
おれがおまえを生かしたんだ。

「なあ、おめえがおらから離れたら、おらはどうなる?」
 
そうだな、死ぬな。

「そっだらおめえはどこに行くだ。」
 
さあ、おれの命は永遠だからな、
人間の魂を時々喰ってまた気に入れば誰かに憑くさ。

「そうか。」
 
どうした、マオリ。

「おらに、もう命はいらねえ。
 だから、おらの魂を喰えよ。」
 
確か、そんな約束をしたな。

「一つだけ、おらの願いを聞いてはくれねか。」

・・・なんだ、言ってみろ。

おれには薄々、マオリの願いがわかっていた。
しかし、その願いを聞き入れなければ、
今度こそマオリは自分の命を絶つだろう。

もう自分で戦うことのできる力をつけたマオリを、
おれですら止めることができない。

マオリの浴びた血、斬った人間ども、
その数はひとりの村娘の操れる力を超えていた。

それは、おれといる限り永遠に、膨らみ続ける死神の力。
< 184 / 206 >

この作品をシェア

pagetop