フクロウの声
一、マオリ
人間どもは、長い間戦いのない時代を過ごしていた。

今じゃあの頃を江戸時代と呼ぶ。

しかし、それも二百年をゆうに超えて
新しい時代がやってくる気配と共に、あの娘、
マオリがいた小さな山に囲まれた村にも暗雲を感じさせていた。

人間は祀るというが、
神社というところにおれを縛り付けていた。

その神社があったのがマオリの生まれた村の外れ、
山を中腹まで上ったところにあった。

マオリの生まれた村は
田や畑で作物を作って細々と暮らす、
あの頃じゃ掃いて捨てるにあまりある小さな小さな村だった。

おれが自由ならば、
すぐに村の端から端まで飛んでいけるだろう。

おれは耳がいいから、村で起こることはすべて聴こえたし、
おれは目もいいから、見ることもできた。
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