恋猫

 (夢芝居はやっと幕か。本当に嫌になるほど長かったよ)


 美化は、鈴が人気の少ない所まで差し掛かると、いきなり姿を現した。


 「あっ、美化じゃないの。どうしてここに」


 鈴は、突然美化が現れたので驚いた。
 美化は黙って歩き続け、小さな路地で曲がった。美化が振り返ると、鈴がすぐ後にいた。


 「美化、いったいどこに行くの」
 「どこに行くのよ~」


 鈴の困ったような声。


 (うるせえ。黙ってついてくれば、すぐわかる)


 (この辺りでいいだろう)


 美化が恐ろしい形相で鈴を睨み付けた。






 
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