恋猫
化身した篠は、辺りを見渡した。
誰も人影は無い。
「これで、良し」
化身した篠は、一言呟くと、何事もなかったような顔をして、しゃなりしゃなりと歩き始た。
(淳ノ介さまに愛されたい。ぎゅ~と、力一杯抱き締められたい。人間として、淳ノ介さまを自分の奥深くに迎え入れたい。そして、淳ノ介さまを全身の細胞ひとつひとつで感じてみたい)
(ああ、長かった。何と、長かった事か。長年の夢が、いま叶う。嬉しい。嬉し過ぎる。あたいは、この瞬間の為に生きて来たのだから・・・)
化身した篠は、内奥から泉のように湧き上がって来る、深い深い喜びを抑える事が出来なかった。
逸る思いに急き立てられ、楓家の屋敷に向う篠の足も、その分速くなった。
楓家の屋敷に着いた。