想い綴り
「あれ?カンナちゃん?」
「あ…ちょっと雰囲気に酔っちゃった。風当たってくる~」
アルコールとタバコの匂いいっぱいの部屋の中。
騒ぐみんなを背にして1人リビングに降りる
ひんやり冷たい空気を受けながら見上げた空に浮かぶまあるい月。
優しく降り注ぐ淡い光は
いつも変わらずに見てることしかできないあたしのそばにあった。
「風邪引くよ?」
不意に背中から聞こえた声
振り返った先に見えたのは
「…稲本くん…」
この部屋の住人の稲本くん。
…声で違うって分かってるクセに
ちょっとがっかりしてる自分
本当すくえないよね
「みんな、まだ飲んでるの?」
「も~、悪のりし過ぎ。ホントあいつらザルだから…」
「あはは、藤本とか底なしだもんね」
苦笑いしながら、部屋の中を覗くと
女の子と笑う藤本が見えた。
藤本の言葉に頬を染めてわらう女の子の姿。
そして、まっすぐに向けられてる恋する瞳…
同じような片思いでも
いつもそんな彼女たちが羨ましかった
「…そんなに藤本が気になる?」
真横から聞こえる稲本くんの一言に
一瞬、ギクリと大きくなる心臓の音。
「まあね、藤本もいい加減彼女作ればいいのにって」
「…あれ?高崎も藤本じゃねぇの?」
「あはは、やだ、ただの友達だよぉっ!!そんなの藤本が聞いたら嫌な顔するよ」
…そう
『友達』
あたしと藤本との間にはもう…
それしか残されてない。
でも、どうしても見つめてしまう自分…
もう…忘れたいのに
そう思った時だった。