想い綴り
「あの……さ、俺じゃ…ダメかな」
肩越しに稲本くんのそんな言葉をきいたのは
部屋の中で笑う藤本を、ただ眺めてた時だった。
聞き慣れない単語に思わず顔を向けると
ちょっと言いずらそうに口元を押さえる、照れくさそうな顔が見えた。
「…いや…前からいいなって思ってたから…ダメかな…?」
まっすぐにあたしを見つめるその視線
一瞬
心が揺れた。
優しくて面倒見のいい藤本くん。
きっと側にいたら…
大切にしてくれる。
「…今すぐじゃなくていい…ゆっくりでいいから…考えてみてくれない?」
この手を取れば…
もう…
藤本のことを考えて…苦しくなったりしない?
無理して笑わなくても
『友達』
普通にそう付き合って行ける?
そう思った時だった。
「クソ寒いのに何してんの。いい加減、風邪引くぞ?」
勢いよく開いたガラス戸の向こうに
無表情な藤本の姿が見えた。