想い綴り










「あの……さ、俺じゃ…ダメかな」











肩越しに稲本くんのそんな言葉をきいたのは

部屋の中で笑う藤本を、ただ眺めてた時だった。









聞き慣れない単語に思わず顔を向けると

ちょっと言いずらそうに口元を押さえる、照れくさそうな顔が見えた。










「…いや…前からいいなって思ってたから…ダメかな…?」







まっすぐにあたしを見つめるその視線






一瞬
心が揺れた。












優しくて面倒見のいい藤本くん。



きっと側にいたら…
大切にしてくれる。












「…今すぐじゃなくていい…ゆっくりでいいから…考えてみてくれない?」












この手を取れば…
もう…


藤本のことを考えて…苦しくなったりしない?



無理して笑わなくても


『友達』


普通にそう付き合って行ける?






そう思った時だった。














「クソ寒いのに何してんの。いい加減、風邪引くぞ?」













勢いよく開いたガラス戸の向こうに

無表情な藤本の姿が見えた。






< 33 / 130 >

この作品をシェア

pagetop