【短】迷子
「さぁ?どうだろうね」
曖昧な返事でごまかす。
この気持ちがなんなのか、言葉で表現することは難しい。
答えられっこない。
《黒髪の女に、魂、持っていかれたか?》
サトルが心配していることはよくわかる。
そんなこと、許されるわけがないことも、自分が一番よくわかってる。
「そうだ。一番下に携帯の番号があるだろ?早苗が幹事を頼んだ子のだから。悪いけど、一度そこにかけてやって」
そう言いながら、手にしていた用紙を折りたたんで、鞄の奥底にしまいこんだ。
「了解」
サトルはにっこり笑うと、ジョッキを空にした。
「いろいろ、悪いな。頼むよ。早苗も、おまえには期待してるってさ」
あと何本吸えるかわからない煙草に火をつける。
「マジで?そっか、そっか。やりがいのあるお言葉をどーもっ」
ライターをカチカチと音を立てながら微笑むサトル。
わざわざ自分から、道に迷いに行くことなんかない。
早苗と一緒に、真っ直ぐ歩いていけばいい。