【短】迷子

「さぁ?どうだろうね」

曖昧な返事でごまかす。

この気持ちがなんなのか、言葉で表現することは難しい。


答えられっこない。


《黒髪の女に、魂、持っていかれたか?》

サトルが心配していることはよくわかる。

そんなこと、許されるわけがないことも、自分が一番よくわかってる。

「そうだ。一番下に携帯の番号があるだろ?早苗が幹事を頼んだ子のだから。悪いけど、一度そこにかけてやって」

そう言いながら、手にしていた用紙を折りたたんで、鞄の奥底にしまいこんだ。

「了解」

サトルはにっこり笑うと、ジョッキを空にした。

「いろいろ、悪いな。頼むよ。早苗も、おまえには期待してるってさ」

あと何本吸えるかわからない煙草に火をつける。

「マジで?そっか、そっか。やりがいのあるお言葉をどーもっ」

ライターをカチカチと音を立てながら微笑むサトル。

わざわざ自分から、道に迷いに行くことなんかない。

早苗と一緒に、真っ直ぐ歩いていけばいい。

< 16 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop