いつか見る青
民さんは優しく微笑んだあと、ふいに何かを思いついたような表情になった。


「そうだ、葵さん。このあと、何かご用はありますか?」


「いえ……特には」


「でしたら、昨日お約束した通り、私の部屋をご覧になりませんか?」


「え?良いんですか?」


私は思わず声を弾ませた。


「ええ、もちろん。旦那様はまだまだお帰りになりませんし、私もちょうど仕事が一段落いたしましたので」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


また一つ、今まで知らなかったお母ちゃんの過去に触れられる。


私はワクワクしながら民さんの案内に従い、食堂を後にした。


廊下を進み玄関ホールを通りすぎ、たどり着いたのは一階の西側突き当たりにある部屋。


引き戸を開けて部屋の電気を点けながら民さんは「あ、ついでに雨戸を閉めておかなくちゃ」と呟いた。


「ちょっと失礼しますね」


言いながら、民さんは部屋の奥に向かい、障子を開け放つ。


その先の縁側に立ち、掃き出し窓を開けると、ガタガタ言わせながら雨戸を閉め始めた。
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