いつか見る青
私はふと気になり、素朴な疑問を投げかけた。



民さんがここで住み込みで働いてるって事は、旦那さんのお世話は誰がしているんだろう?


「主人は亡くなりました。一昨年、脳溢血で…」


「えっ。そうだったんですか?」


私は慌てた。


「あの、御愁傷様でした…」


「いえいえ、そんな気を遣わないで下さいな。主人は80過ぎまで生きましたから、大往生ですよ。本人も満足して逝ったでしょうし、最期きちんと看取ることができましたから。私も悔いはありません」


民さんは穏やかな口調で答えた。


「私達には一人娘がいるんですけど、嫁ぎ先でお姑さんと同居ですから、私がそこにお邪魔する訳にはいきませんからね。主人が亡くなったあとは一人で気ままに暮らすつもりだったんですけど」


民さんは一呼吸置いてから続けた。


「こちらの旦那様が「もし良かったら住み込みで働いてくれないか」っておっしゃって下さって。私の年齢が年齢ですから、一人暮しを心配して下さったんだと思います」


そういえば、すごくシャキっとしてるけど、民さんて70代なんだっけ。
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