××倶楽部

「嫌、行かない」


 男勝りな性格の母親にため息をつかれた。


「駄目よ。あなた、どれだけ可愛がってもらったと思ってるの。許さないわ、すぐに支度しなさい」


 ぐちゃぐちゃの髪を無理矢理ブラッシングされて、有無も言わずにマニキュアをはがされて手を引かれた。


「気持ちはわかるわ。でも取り乱さないで、聖夜くんはもっと辛いんだから」


 いつの間にか帰ってきていた父親も一緒だった。男勝りな母親、無口で存在感のない父親。

 その日は父親の存在も母親の存在も心強くて、聖夜に申し訳ないような気がして私は終始俯いていた。


 聖夜の家はいつもより人の出入りが頻繁にあって、玄関は靴で埋め尽くされていた。顔をあげずに部屋に入ると、摩夜さんが消え入りそうな声で私たちが来たことに感謝していた。


 私の母は泣き崩れそうになりながらも、父親がしっかりと支えていた。


 聖夜は何の感情のこもっていないビー玉みたいな目をしてダイニングチェアに座って頬杖をついている。

 表情が全部欠如してしまった聖夜を見ることは、悲しみに押しつぶされて泣いている聖夜を見るより遥かに辛かった。





 
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