××倶楽部

 彼が下を向く度に少しずれる黒縁メガネ。その奥の優しい眼差し。

 脳内は、二人きりのオフィスで彼が私の手をそっと優しく包みマウスを動かすシーンに突入していた。

 振り返ると、その甘いマスクがすぐ近くにあり……メガネ越しの眼差しは優しく、私は目をそらせなくなる。


『いいですか?』


 何がいいんだろう…………もしかして、とイケない期待をして、その薄い唇を見つめた。

 そんな……社長……私たちまだ出会ったばかりなのに…………


『町田さん? 勤務時間は午後から夜にかけてになりますけど、いいですか?』


 あっ、面接中だった! と冷や汗をかきながら、大丈夫です、と力強く答えた。


『それなら問題ないです。決まりということで、よろしいですか?』


 神様に見えた。社長は、私の神様だ。

 この就職難地獄から救ってくれる金の蜘蛛の糸が目の前に降りてきた。私は必死にその糸を掴んで地獄を脱出したのだ。



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