××倶楽部
典が、いい男。
これが私の周りにいる人たちの共通意見だ 。たしかに顔はいいのかもしれないけど、性格は最悪だ。
だけど、意地になって典よりいい男を探しているうちに現実味ない恋愛を繰り返してしまった私。そこら辺の男じゃ、なかなか典に対抗できなくて、いっつもムキになってた。
もちろん、社長は間違いなく典より、いい男だからなんの問題もない。
『あ、そうそう。それでさ、今日は皆で飲みに行こうって話しになってるんだ。芽依、来れる? メンバーは、私とユメでしょ、それからあとは中学のメンバー揃えてるんだ』
「飲み会……うん、わかった! 仕事終わったら電話する」
たまには同級生に会うのも楽しいかも、と私は奈美の誘いを有り難く受けることにした。きっと、来るのはいつもの女子メンバーだ。
典の元カノのユメちゃんがいるってことは、あの憎々しい典は来ないだろう。
奈美との通話を終えて、私は典から借りた漫画を紙袋に投げ入れていく。
あーあ、まだ読み途中のもあるのに…………典のばか。
でも私は私で生まれてはじめて身近な人を好きになったんだもん。典になんかかまってられない。この恋は叶わないかもしれないけど、好きなものは好き。
「はあ…………」
重ねたため息は、気がつかないふりして重くなった紙袋を持ち上げた。