晴明の悪点
穢れを祓い終え、清明は物の怪出現の原因を忠親に話した所で、遠子に気になったことを問うた。
「なにか、女の方に恨まれるような事は、なさっておりませんか。
例えば、恋愛に関わってとか・・・」
「ないわ。男さえもほとんど、憑かれやすい私に近寄りはしないもの。
しかし、どうして」
「舌が目立つという事は、女の強い怨念の現われなのです」
この時代、女の強い怨念といえば、だいたいは男やら恋愛やらが絡んでくる。
しかし、まったくと言っていいほど男の影が無い。
源氏一門の貴公子との婚約があるにしても、それは最近の事だ。
今まで遠子に憑いていたものが全て同じものだったら、上記のことが原因では無いだろう。
そして、冴子。
「遠子様・・・」
「冴子とは誰にございますか?」
清明の先を越して、蓬丸が問うた。
すると―――遠子の表情がひどく曇った。
その表情は悲しげであって、瞳の奥は冷え冷えした青色へと変色した。
「私の、妹よ」
その声は震えていた。
ばっと遠子の顔を見つめてみると、その表情は険しいものだった。
険しい、というのは語弊だった。
不穏と言うか、もっといえば泣きそうな顔でもある。