晴明の悪点
「妹、でございますか?」
あまりにただならぬ表情ゆえ、清明はひと際声を高くした。
嫌な予感がしないわけではない。妹、そしてその不穏な表情からして読み取れる事は、ある。
妹との決別、と言ったところか。
「私が八つの頃、ほんの五つにして鬼籍となった妹よ」
死んだ、と言うことだ。
「―――ここではあまり話したくない。部屋で、あなただけに話すわ」
気付かれぬようにか遠子は忠親を突き刺す視線で一瞥をくれた。
父親に聞かれたくない事がある、と見て取れる。
先ほどまで、妖かしに憑かれそれを目の当たりにしたものとは思えぬ落ち着きぶりである。
それだけ、妹・冴子について大きなことがあった、と思しい。
「ですが、姫――」
「いいから、早く部屋に来なさい」
戸惑いを隠せぬ様子で言う清明にぴしゃんと言い放つや、遠子はさっさと部屋に戻っていった。
おそるべし、遠子。
思う傍らで清明は律義に頭を下げて、ちらと忠親を見やって部屋に入って行った。
再び部屋を閉鎖してしまうらしい。
遠子はまた戸を閉めて妖気漂うその場に座り、その美貌をゆっくりとあげた。
「冴子は、私と同様に物の怪たちを引き付ける者だったわ」
「見鬼(けんき)、でございますね」
「けんき?」
「妖かしを視る力を持つ者にございます」
実際、それらが『存在する』と信じていれば、見鬼ならぬものでもおのずと妖かしが見えてしまうのだが、
見鬼らの場合、妖かし存在を否定していても見えてしまう。
やはりそのためなのか、妖かしの類たちもそういった己らを視るものに近寄ってくるらしい。